マウス胚嗅球の僧帽細胞の軸索は、終脳の非常に狭い領域を選択的に伸長し、嗅索と呼ばれる軸索束を形成する。この軸索は、嗅索領域に局在する道標的神経細胞lot細胞によってガイドされる事が知られている。lot細胞による軸索ガイドの分子機構を探る目的で、この細胞に特異的に発現する遺伝子のスクリーニングを行った。lot細胞を多量に含む嗅索領域とlot細胞を含まない新皮質領域から、それぞれmRNAを調製してcDNAを合成した。嗅索領域に存在する遺伝子だけを特異的に増幅できるように工夫してPCR反応を行い、得られたcDNA断片をベクターに挿入して、サブトラクティブライブラリーを作成した。そのうちの約500クローンについてdifferential hybridizationをおこない、嗅索領域により強く発現する130個のクローンを選択した。これらについて塩基配列の決定、ならびにin situ hybridizationを行って発現領域を検討したが、lot細胞に特異的に発現するものは得られなかった。今後はさらに多くのcDNAクローンのスクリーニングを継続して行う予定である。
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