本研究では、出芽ホヤの芽体において様々な組織が成体体細胞の分化転換によって生じること、レチノイン酸が分化転換を誘導する内在因子であることを明らかにしてきた。初年度(11年度)はホヤから単離されたレチノイン酸受容本(RARとRXR)がレチノイン酸依存的な転写調節因子として機能すること、レチノイン酸によって発現が誘導されるプロテアーゼ(TRAMP)に細胞増殖活性があることを明らかにした。今年度(12年度)には以下のことを明らかにした。 1.TRAMPの活性活性部位に変異を導入し酵素活性をなくした(プロテアーゼドメインのみからなる)タンパクが増殖促進活性を持つ、つまり細胞増殖誘導がプロテアーゼ活性とは別の機能によることがわかった。 2.TRAMP N末側のタンパク間相互作用に関与するドメインを1つあるいは2つ含むリコンビナントタンパクを調製し、ウェストウェスタン法によって結合タンパクを探索した。2ndスクリーニングまで進んだが、まだクローンは得られていない。 3.TRAMPリコンビナントタンパクを免疫原として抗体を調製した。TRAMP mRNAの間充織細胞における発現はレチノイン酸によって誘導されることがわかっている。レチノイン酸処理した間充織細胞の上清にTRAMPタンパクが分泌されるかどうか、抗体を用いて確認を試みた。 4.胚発生におけるRAR/RXRの機能と役割を解析するためにカタユウレイボヤからRARとRXRのcDNA断片を単離した。一方、藤原らの別の研究で解析中のESTデータの中にRAR cDNAの配列を発見した。RAR、RXRの胚における発現を解析し、レポーターアッセイなどによって機能を解析する予定である。
|