1.Notchシグナリングの器官形態形成における機能の分子機構の理解、特に未知の下流遺伝子の同定のために、遺伝学的スクリーニングが有力な方法のひとつと考えられる。私はすでにNotchレセプター分子のドミナントネガティブ型をUAS-GAL4システムにより発生過程の器官(成虫原器)に発現させることによって、Notchシグナリングに関して機能喪失型の表現型を持つショウジョウバエの系統を確立した。その表現系は多岐にわたるが、その程度はきわめて安定であると同時に、妊性も大変優れていて、遺伝的なスクリーニングに適している。その後の解析の容易さを考えて、P因子の挿入による突然変異をスクリーニングに用いる予定であり、そのための系統を確立した。現在までにこの方法の有効性を見るためのミニスケールによるパイロット実験を行い、その有効性が確かめられた。 2.神経細胞表面におけるレセプターあるいはリガンドの多くはその機能のために細胞の内側からの制御を受ける必要がある。その中でもPDZタンパク質による細胞内からの制御は一般的であり、Notchリガンドの場合にもあてはまる。多くのPDZタンパク質の中でもPick1は膜タンパク質のクラスター化を引き起こす能力が示されている点で特に興味深い。そこでPick1を単にNotchのリガンドを細胞内から制御する候補分子としてだけではなく、神経軸策、樹状突起、あるいはシナプスにおいて細胞外からのシグナルを受け取るレセプターと細胞内骨格の相互作用を担う重要な分子のひとつととらえて、ショウジョウバエの系を用いることでその機能解析を開始した。現在までにハエのホモログの単離とその基本的な解析を終了したが、その結果機能部位と考えられる構造はよく保存されていることが明らかになった。
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