研究概要 |
我々は、Cre-loxシステムを応用し、トラップクローン樹立後にレポーター遺伝子を任意の遺伝子に置換できる、可変型遺伝子トラップ法を開発してきた。最初に構築したベクターpU-Hachiのシステムでは、標的遺伝子挿入のために野生型loxP配列の右側の末端に変異を入れたlox66配列と左側の末端を変異させたlox71配列を用いていた。このベクターでは、レポーターのβ-geo遺伝子をcDNAに置き換えることは出来たが、トラップされた遺伝子のエクソンを利用した融合遺伝子を作ることは出来なかった。そこで、応用範囲のさらに広い有用なトラップベクターに改良するため、lox66/71とは異なるタイプの変異で、中央部のスペーサー領域に変異を入れたlox2272配列やlox511配列を組み合わせて利用することを試みた。まず、promoter+lox71+bsr-pA+lox511+lox2272というコンストラクトを1コピーもつES細胞株を樹立し、2種類の変異loxに挟まれた部分を置換する効率を検討した。その結果、lox66/71のみを介した挿入反応よりも、lox66/71とlox2272配列やlox511配列を組み合わせた置換反応の方が2-3倍効率が良いことがわかった。そこで、これらの配列を利用した新しいトラップベクターpU-17を完成した。その構造は、イントロン+lox71+スプライスアクセプター+β-geo+loxP+ポリAシグナル+lox2272+pSP73+lox511配列というもので、lox71をスプライスアクセプターの前に移動したので、5'側の部分との融合遺伝子を作ることも可能で、また、lox2272を用いた置換反応を行えば、3'側の部分と融合遺伝子を作ることも出来る。現在、このトラップベクターを用いて700クローン以上を単離し,変異マウスラインの樹立を行っている。
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