研究概要 |
ショウジョウバエ神経系のニューロン・グリア決定と血球分化で機能するgcm遺伝子は新規の転写調節因子をコードし、そのDNA結合部位は進化的に保存している。本研究ではgcm型転写調節因子群の機能を調べることにより、細胞の分化機構を探ることを目的としている。マウスの2つのgcm型転写調節因子のうちmGCMaは腎臓で、mGCMbは精巣で組織特異性を持って発現していた。さらにmGCMa,bは、ともに神経系でごく弱い発現が認められるほか、いずれも血液系と見られる発現が認められ、血液分化に関与している可能性が考えられた。gcm型転写調節因子のこれらの器官における機能を明らかにすることを目的とし、ノックアウトマウスの作成を行っている。mGCMa,bのそれぞれについて、β一GAL遺伝子をノックインするためのベクターを作成した。いずれもES細胞への導入が確認された。mGCMbについてはES細胞の導入によるキメラマウスの作製、ES細胞由来細胞の生殖系列への移行が確認された。平成12年度はこれらのマウスの症状を上記の器官を中心として解析する。ショウジョウバエには新しいgcm類似遺伝子gcm2があり、その転写調節因子としての性質はgcmと類似していた。またgcm2はgcmと同様に血球系で強く発現していた。gcmとgcm2の両方を欠く染色体欠失系統ではgcmのみを欠く場合より血液細胞の異常が重くなったことから、gcmとgcm2が血液分化において重複して機能している可能性が示唆された。
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