分泌蛋白や膜蛋白の多くは、Golgi体において多様な糖鎖修飾を受けている。近年のショウジョウバエを用いた遺伝学的な解析から、糖鎖修飾が発生において重要な役割果たしていることが明らかとなってきた。申請者は、Golgi体に局在する新規の糖核酸輸送体(UST74C)を同定し、その変異体の解析を行った。変異体の表現型は、多様な細胞間相互作用に用いられているNotch受容体の変異形質によく似ていた。糖核酸は糖鎖修飾の基質であるので、この変異体においては糖修飾に異常が生じていると考えられた。そこで、変異体の蛋白質の糖鎖構造を幅広く調べたところ、Notch受容体上の糖鎖構造に特に異常が生じていた。なぜ、特定の蛋白質の糖鎖構造に異常が生じるかについて解析するために、この分子の細胞における分布を調べたところ、すべてのGolgi体ではなく一部のGolgi体にのみ局在していることがわかった。UST74Cが一部のGolgi体に局在する過程を観察するために、UST74CにGFP(Green Fluorescent Protein)を融合した遺伝子をもつトランスジェニックショウジョウバエを作成し、Golgi体の細胞内での動態を観察する計画を進めている。このことにより、Golgi体の多様性を生み出すメカニズムを解くことができると考えている。この研究は、細胞内小器官の動態を遺伝学的にアプローチできる系として、非常にユニークなものである。
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