研究代表者らはこれまでに、各発生段階の大脳皮質に優勢・あるいは特異的発現を示す新規遺伝子を数種類同定してきた。それら遺伝子の一つ(以下では便宜的に「KI遺伝子」と呼ぶ)は、発生期の大脳皮質において発現の前後軸に沿う部位差がみられた。本研究は、このKI遺伝子発現の強度勾配を解析することによって大脳皮質に部位差が形成されるメカニズムの一端を明らかにしようとするものである。年度後半に追加で採択が決定されたために研究開始が年末近くまで遅れたが、今年度は当初の計画のうちKI遺伝子産物に対する抗体の作成を中心に行った。 KI遺伝子の塩基配列から予想されるKI遺伝子産物のアミノ酸配列を検討し、この一部分のアミノ酸配列をもつペプチドを抗原としてウサギを免疫したところ、得られた抗血清はELISA法では抗原ペプチドと反応することが確認されたが、ウエスタンブロット解析上発生期大脳皮質由来の蛋白質とは明確な反応を示さなかった。そこでKI遺伝子産物中上記とは異なる部分に相当する組換え蛋白を大腸菌を用いて作成し、それを抗原としてマウスを免疫してモノクローナル抗体を作成する試みを現在行っているところである。
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