1 マウスにおいて、視神経、脳梁、脳弓、脊椎切断を行い、それぞれの処置後30分より14日後までの各時間経過後に切片を作成しニューロプシン遺伝子の発現をin situ hybridizationにて検討した。その結果切断後12時間から8日にかけて線維束の細胞を中心にニューロプシン遺伝子誘導が見られた。これらの部位には通常はニューロプシン遺伝子は全く発現していない。 セリンプロテアーゼ、ニューロプシンが脳、神経の障害時にその細胞死もしくは修復過程に重要な役割を果たしているのではないかと考えられたので、どの様な機能があるかを明らかとする必要性がある。そこで、本研究の目的は細胞障害時のニューロプシン発現がどの部位でどの時期に、どのような機能を持って起こるのかを明らかにすることである。 2 蛋白質の発現を抗ニューロプシン抗体を用いての免疫組織化学により検討を行った。ニューロプシン陽性構造は線維束にある直径10-20μmの細胞体及び、その突起に認められた。この反応は、切断手術を行っていない動物からの切片では観察されなかった。また、ニューロプシン遺伝子ノックアウト動物では、切断等の手術をおこなってもこのような陽性反応は観察されなかったので、この免疫反応は特異的なものであると考えられる。 3 発現細胞の同定のため、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのマーカーであるMAP-2、GFAPMBLに対する抗体を用いた免疫組織化学との二重染色を行った結果、MBLとの関連が示唆されたので、ニューロプシンと、PLP遺伝子との二重in situ hybridizationを行った。多くのニューロプシンmRNA発現細胞がPLP陽性であったことより、ニューロプシン陽性細胞は成熟オリゴデンドロサイトであると考えられる。
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