本研究では、蛍光蛋白質GFP(green fluorescent protein)を利用した細胞標識技術を脳の切片培養系に応用し、脳の形成過程での細胞分裂や細胞分化に伴う形態変化を生細胞において連続的に観察する実験系を構築する。材料としては、研究代表者が長年その切片培養系の開発と応用を続けてきたラット及びマウスの小脳を用いる。本年度は本研究の前半として、GFP遺伝子の導入方法や、培養切片を顕微鏡下で維持し蛍光観察する方法について種々の条件検討を行い、最適な方法の開発を進めた。 1.GFP遺伝子の導入方法については、β-actin又はnestinのプロモーター制御下でGFPを発現するトランスジェニックマウスを使用する方法と、electroporationによってGFP遺伝子を導入する方法を試みた。発現量の強いことから後者が優れていたが、発現細胞の同定方法を工夫する必要があった。 2.培養切片を顕微鏡下で維持する方法については、温度・pH・湿度の制御が重要であったので、顕微鏡用インキュベーター等に関して各条件を最適に保つような調整を行った。 3.蛍光観察の方法については、GFPの退色は非常に少なかったため、連続的な観察に十分に耐えられることがわかった。以上のような検討の結果、切片培養系を3〜5時間程度顕微鏡下で安定して維持し、生きている顆粒細胞の移動や形態変化を連続的に観察することができた。来年度はこの実験系を利用して、小脳形成における細胞間相互作用の動態を解析する予定である。
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