ノシセプチン受容体ノックアウト(KO)マウス脳組織において発現が増加ないし減少する新規遺伝子断片の単離をcDNAサブトラクション法により行なった。KOにより発現が増加する新規遺伝子断片"H-E69"および"H-E91"、発現が減少する"E-H17"の3クローンについて完全長cDNAのクローニングおよび組織内発現分布について解析した。 "H-E69":364アミノ酸をコードする全長3.45kbのcDNAで、ノーザンブロッティングから脳での発現が最も強かったが、肺・心臓・精巣・消化器などにも広く発現が認められた。酵母・線虫・ショウジョウバエなどで広く保存された2回膜貫通型タンパク質がコードされ、生命活動に必須なタンパクと推定される。 "H-E91":562アミノ酸をコードする全長3.0kbのcDNAで、脳でのみ特異的に発現が認められた。タンパクのN末端部分はヒトAdenylate kinase(Ak)type1と中等度の、C末端はヒトAk type5と非常に高いホモロジーをもつが、Akモチーフを2つもつ点で現在までに知られているAkとは異なった新しいタイプの酵素タンパクであると考えられる。 "E-H17":323アミノ酸をコードする全長2.5kbのcDNAで、脳・肝臓・心臓で特に強く発現が認められた。4回膜貫通型タンパク質と推定され、Mitochondrial carrier proteinsモチーフをもつことから、ミトコンドリア膜タンパクと考えられる。 各mRNA発現をIn situ hybridizationで解析した結果、ノシセプチン受容体発現が豊富な視床下部腹内側核・外側中隔核・海馬歯状回において、その発現がKOにより増加あるいは減少していることが確かめられた。今後は、これら遺伝子産物の機能の解明およびノシセプチン受容体を介する情報伝達にどのように関与するのかを詳らかにしていきたい。
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