研究概要 |
我々はこれまでに、Cdk5ノックアウトマウス及びp35ノックアウトマウス(未発表)の作成とその表現型の解析を通じて、Cdk5/p35が大脳、小脳、海馬などにおいて、脳の発達特に神経細胞の移動に基づく皮質形成に重要である事を明らかにしてきた。さらにCdk5-/-マウスの解析及びCdk5-/-ES細胞を用いたキメラマウスの解析によりCdk5欠損は小脳のプルキンエ細胞や顆粒細胞の移動をcell-autonomousに障害している事を明らかにした(T.Ohshima et al.,J.Neurosci 19,6017-26,1999)。Cdk5の不活化がなぜ脳皮質形成の異常を来すかは現在不明であるが、Cdk5/p35がRac1依存性にPak1をリン酸化してそのキナーゼ活性を制御し、神経細胞の神経突起の伸展に関与している事が報告された(Nature 395:194,1998)。今回の検討により、Pak1,Cdk5,p35を培養細胞へcotransfectionする系で、Pak1がCdk5/p35によりそのスレオニン残基がリン酸化を受けることを、Pak1に対する抗体を用いて免疫沈降し、抗リン酸化スレオニン抗体にて検出する方法にて確認した。またこの方法を用いてCdk5-/-,Cdk5+/+脳におけるPak1リン酸化を検討し、preliminaryな結果ではあるがCdk5-/-脳においてはこのリン酸化が検出感度以下に減少しているという結果が得られ、マウスの発達期の脳においてもCdk5/p35がPak1の特異的な部位をリン酸化している事が示唆された。現在このCdk5-/-脳におけるPak1リン酸化部位の特定を進めている。こうした検討は今後Cdk5による神経細胞の移動の制御とPak1の特定の部位のリン酸化の関連を検討する上で重要であると考えられる。
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