研究概要 |
ニホンザルの補足運動野,腹側および背側運動前野の上肢支配域に刺激電極を慢性的に留置した。一次運動野出力細胞のうち錐体路細胞を細胞外記録を用いて延随錐体の電気刺激に対する逆行性応答の有無により同定し、錐体路細胞と非錐体路細胞の補足運動野、運動前野電気刺激に対する反応性を検索した。同定された錐体路細胞の高次運動野電気刺激に対する典型的な反応は,順行性の興奮性の応答と,それに引続く比較的長い期間(平均90-100ミリ秒程度)の抑制性の応答であった。抑制性の応答を示す錐体路細胞もまた多く見いだされたが,興奮性の応答のみを示す細胞は見いだされなかった。補足運動野,腹側および背側運動前野のすべての刺激に対して興奮性の応答を示す細胞の割合は,12,1%であったのに対して,3ヶ所すべての刺激に対して抑制性の応答を示す錐体路細胞の割合は70.4%の高率にもおよんだ。これらは皮質内では主としてV層に分布していた。一方,非錐体路細胞では順行性の興奮性の応答が確認され,補足運動野,腹側および背側運動前野のすべての刺激に対して興奮性の応答を示す細胞の割合は,13.9%であり,皮質内では主としてII-II1層に分布していた。多くの錐体路細胞が補足運動野,腹側および背側運動前野のすべての刺激に対して抑制性の応答を示したことは介在細胞がその軸索の分岐によって多くの錐体細胞を同時に抑制していることを示唆している。
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