【本研究は、神経突起伸展因子としてラットおよびマウスから単離したsproutinの、神経ネットワーク構築に及ぼす作用を明らかにするために、1.sproutinによるシナプス形成作用を脳スライス培養標本や初代培養神経細胞を用いて調べる、2.マウス脳内におけるsproutinの機能を、sproutin発現のノックダウン法で調べる、3.ヒトのsproutin配列を同定する、ことを目的とした。】1、幼若ラットの大脳皮質をスライス標本として培養し、また胎児ラットの大脳皮質の神経細胞を初代培養した。これらの標本へsproutin cDNAをトランスフェクトすることを目的としたが、まずその前段階として、GFP(Green Fluorescent Protein)発現ベクターに挿入したsproutin cDNAを、株化神経細胞SK-N-SHにトランスフェクトした。しかし、GFPの発色でモニタリングされるべきsproutinの発現が観察されなかったことから、現在トランスフェクトの条件や構築したベクターの確認を進行中である。2.Sproutin配列の2ヵ所に対するantisense oligomerを合成した。ddYマウスの脳室内に、10μgで単回投与あるいは3日間連続投与し24時間後、大脳皮質と海馬を摘出した。いずれの部位でもantisense oligomer投与によるsproutin mRNA発現の減少が認められなかったことから、ノックダウンに至適なantisense oligomerの配列を検討中である。3.ヒトのsproutin cDNA配列を解析するために、既に配列を決定したマウスおよびラットのsproutin配列を参考にした、(RT-)PCRによるクローニングを行なった。プライマー配列や増幅条件を複数の組み合わせで用意し、ヒト全脳のcDNAライブラリーやヒト神経芽細胞種SK-N-SHのtotal RNAからクローニングを試みたが、いずれも増幅産物が得られなかった。このことは、ヒトのsproutin配列がマウスやラットの配列とかなり異なっていることを示唆している。
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