海馬長期増強(LTP)におけるCaM kinase IVの活性とリン酸化反応の検討 (1)ラット海馬スライスCA1領域において100Hz1秒2回の高頻度刺激によってLTPを誘導した。CaM kinase IV活性化反応とリン酸化反応は、高頻度刺激後一過性に上昇したが、30分以内に基礎レベルまで減弱した。 (2)同様の高頻度刺激により、MAP kinaseのリン酸化反応も、CaM kinase IVと同様に一過性の上昇およびそれに続く減弱を認めた。CaM kinase IIのリン酸化反応は上昇した後、60分後まで維持された。CaM kinase IVの代表的基質であるCREBのリン酸化反応も、上昇した後60分後まで維持された。 (3)CREBのリン酸化反応について薬理学的特性を検討した。高頻度刺激後3分および30分で見られるCREBリン酸化反応の上昇は、カルモデュリン阻害剤Calmidazolium、CaM kinase阻害剤KN93により有意に減弱した。MAP kinase阻害剤U0126は、高頻度刺激後30分のCREBリン酸化反応のみを有意に阻害した。Protein kinase A阻害剤H89はCREBリン酸化反応を阻害しなかった。 (4)CREBにより発現制御されると考えられるc-Fosの発現は、高頻度刺激後60分で有意に増加した。この増加は、CalmidazoliumおよびU0126によりそれぞれ減弱した。減弱の程度はCREBリン酸化の減弱の程度と相関した。 以上の結果より、CaM kinase IVは高頻度刺激により誘導されるLTPに伴い一過性に活性化されており、高頻度刺激直後からCREBリン酸化反応に関わっていることが示唆された。また、MAP kinase系路も、高頻度刺激後30分以降の点でCREBリン酸化反応に関わっていることが示唆された。 これらの結果は現在J.Biol.Chem.誌に投稿中である。
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