現在までに脊椎動物より、2種類のフェロモン受容体がクローニングされている。1つは、匂い受容体と構造が類似しており、もう一つが、代謝型グルタミン酸受容体と構造が類似しているものである。両者とも、マウス・ラットの鋤鼻器に特異的に発現しており、フェロモン分子の受容を行っていると考えられているが、その受容体に結合するフェロモン分子が何であるか、不明のままである。(これらはフェロモン受容体と呼ばれているが、あくまでも仮定上のフェロモン受容体である。)そこで、フェロモン受容体の機能解析ならびに、リガンドとしてフェロモン受容体に結合する分子の同定を目的とし、フェロモン受容体(VR1ならびにVR4)を発現するアデノウイルスベクターを作製した。VR1ならびにVR4は代謝型グルタミン酸受容体と構造が類似しているフェロモン受容体に属し、無機化合物よりも蛋白性の分子が結合するのではないかと推測されている。これらのアデノウイルスベクターは、一つのアデノウイルスベクターからフェロモン受容体と、緑色の蛍光を発するGFPを同時に発現するように設計されており、遺伝子が導入された細胞はGFPの蛍光を観察することによって同定できる。これらのアデノウイルスベクターを用い、現在、フェロモン分子の探索を行っている。また、アデノウイルスベクターを鋤鼻器へ注入し、鋤鼻器にある神経細胞に直接フェロモン受容体を強制発現させる試みを行っている。
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