本研究の目的はラットにおけるセロトニン(5-HT)2A型受容体(5-HT2AR)の小脳型サブタイプのクローニングである。研究代表者は本格的なクローニング作業に入る前にまずラット小脳において5-HT2ARのmRNAが発現しているかどうかをNorthern Blotting法によって調べたところ、小脳においても大脳とほぼ同様のサイズに転写産物を認めた。さらにラット小脳RNAで既知のラット大脳型5-HT2ARの塩基配列より作製したプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ予想されたサイズにPCR産物を検出できた。研究代表者はラット小脳cDNAを鋳型としてラット大脳型5-HT2ARの塩基配列より作製したプライマーを用いて3'及び5'-RACE法によりラット5-HT2ARの小脳型サブタイプの遺伝子を増幅し、dideoxy法により塩基配列の決定を開始したところ、小脳における5-HT2ARの塩基配列は大脳型のそれと100%の相同性を呈していた。放射性同位体標識5-HT2ARリガンドを用いた脳内マッピングなどの従来の形態学的手法を用いたこれまでの報告では、中枢神経系における5-HT2ARの分布は大脳皮質の神経細胞に限られ、小脳には全く見出されないとされていたが、今回の研究で小脳にも大脳と同じ5-HT2ARが存在することが確かめられた。しかしながら小脳に特異的な2A受容体サブタイプの存在の可能性は低いと考えられる。今後は小脳に存在する2A受容体がどのような機能を担っているのか解明していく予定である。この内容は第29回Society for Neuroscienceで発表した。研究代表者は小脳5-HT2AR遺伝子クローニングの過程で5-HT2AR遺伝子に存在するポリモルフィズム(多型)も発見、拒食症や突然死の解明のきっかけとなった。
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