1.ラットプロラクチン(rPRL)、ヒト成長ホルモン(22K hGH)は脳内のPRL受容体(PRL-R)を介してストレス性の胃潰瘍を抑制していた。rPRLや22K hGHの皮下、腹腔内投与及び側脳室内投与は明らかにストレス性の胃潰瘍を抑制したが、ラット成長ホルモン(rGH)は何ら抑制効果を示さなかった。また、rPRLや22K hGHの腹腔内投与による細胞保護効果は脳内に投与したプラゾシン、ヨヒンビン、プロプラノロールの混合により90%以上が阻害された。この結果はrPRLや22K hGHの脳室内投与と同時に脳室内に投与したプラゾシン、ヨヒンビン、プロプラノロールの混合による阻害率にほぼ匹敵した。さらに、rPRLや22K hGHの腹腔内投与は脳内のPRL-R mRNAを明らかに誘導させたが、rGHは脳内PRL-R mRNAの発現に影響を及ぼさなかった。これらの結果は末梢及び中枢投与したrGHが細胞保護作用を示さなかった結果と一致していた。 2.ストレスによる一過性の血中プロラクチン(PRL)の上昇は胃潰瘍の発現において重要な意味を持っていた。細胞保護効果において脳内PRL-Rの活性化が非常に重要であることから、ストレスによって上昇したPRLの脳内へ移行した分子のみを中和及び受容体競合させるためにPRL及びPRL-R抗体を用いた。その結果、PRL及びPRL-R抗体の脳室内前処置は明らかに7時間後のストレス性胃潰瘍の発現を悪化させた。また、これらの抗体はrPRLの側脳室内投与による細胞保護作用も完全に阻害した。 以上の結果から、ストレスによる血中PRL濃度の上昇はストレス性胃潰瘍発現を脳内で調節する意味において重要であることを示している。
|