K+チャネルは神経細胞の発火パターンを決定する重要なイオンチャネルであり、その機能の分子基盤の解明は神経科学に於ける重要課題のひとつである。K+チャネルはαサブユニットとβサブユニットから構成されるが、いずれのサブユニットにも多数の種類が存在する。しかし、神経細胞におけるK+チャネルがどのようなαとβサブユニットの組み合わせで形成されるかは不明である。線条体コリン作動性細胞(以下ではコリン細胞と略す)ではKv4とKv1のαサブユニットとβ1-β3が同時に発現されており、Kv1は軸索に、Kv4は細胞体に局在を示す。本研究では、βサブユニットのコリン細胞における部位局在を可視化することによってβとαサブユニットの結合パタンを探ることにした。そのために、まず線条体細胞の培養標本を確立した。培養にはE18〜E20のラットを用いた。アセチルコリンの合成酵素であるChATに対する抗体を用いた免疫染色によって、培養標本にコリン細胞の存在を確認することができた。この染色より、3週間前後培養すれば、コリン細胞はその形態的な特徴を獲得し、染色せずに顕微鏡観察で確認できることが分かった。βサブユニットを導入する前に、緑色蛍光蛋白のプラスミド(Gibco plasmid pGreen)の導入でコリン細胞への遺伝子導入の可能性を検討した。その結果、多くの線条体ニューロンに緑色蛍光蛋白が導入されたが、コリン細胞への導入は観察できなかった。その理由は恐らくコリン細胞の密度が低いからだと思われる(コリン細胞は線条体の2〜3%)。今後培養標本におけるコリン細胞の密度を上げることが必要となる。αとβサブユニットの結合パタンを探る別のアプローチとして、発生に伴うαとβサブユニットの発現とカリウム電流との関係を調べる実験も開始した。本研究に関連した研究課題で成果が得られたので、論文(研究発表)にまとめた。
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