昨年報告したように、本研究ではアストログリア特異的なマウステネイシン遺伝子の発現調節領域をすでに見出している。このプロモーター領域の下流に細胞破壊作用のある外来遺伝子、ヘルペスシンプレックスウイルスーチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子をつなぎ(TN6/TK)アストログリア初代培養系へ導入して発現させた。この時、コントロールとして、プロモーターなしの導入遺伝子(-/TK)も作成し同様に導入した。発現ベクター内にはネオマイシン耐性遺伝子が組み込まれているため、培養メディウム中にG418を加えて2週間培養したところ、導入遺伝子が組み込まれたアストログリアのみ生き残った。次に、培養メディウム中にヌクレオシドのアナログであるガンシクロビルを加え、3日間培養し、クリスタルバイオレットで染色して生存率を求めた。その結果、ガンシクロビルが低濃度の場合生存率は80%程度であったが、高濃度になるに従い生存率は低下し、最終的には60%生存率で一定となった。この時、-/TKを導入したアストログリアではガンシクロビルの濃度に関わらず生存率は100%であった。また、コンストラクトを導入していないアストログリアでも同様に生存率100%であった。生き残ったアストログリアをテネイシン抗体を用いて染色したところ、すべてのアストログリアでテネイシンの発現は認められなかった。一方、-/TKを導入したアストログリアではテネイシン陽性、陰性両方のアストログリアが認められた。以上のことから、ガンシクロビル存在下で生き残ったアストログリアーサブセットはテネイシン陰性アストログリアである事が示唆された。現在、今回選別されたアストログリアーサブセットを用いてin vitroでの機能解析を進めている。また、以上の結果をまとめ、2000年12月の第23回日本分子生物学会で発表を行い、現在Mol.Brain Res.に投稿中である。
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