研究概要 |
鳥類の蝸牛神経核である角状核と大細胞核は共に第八神経からのシナプスを受けているが、角状核では音の音圧に関する情報を抽出し、大細胞核では時間に関する情報を抽出すると言われている。 まずは、この二つの核に関して電気生理学的機能に深く関与していると考えられるカリウムチャネルの分子的分布の違いを比べた。関与が指摘されていたKv1と3のグループをクローン化するために、縮重プライマーを作製してPCRを行い両方の核より抽出したRNAをもとにクローン化したところKv1.1,1.4,1.2,1.6,3.2,3.3が単離出来た。次に、PCR産物を用いてサザンブロッティングを行ったところKv1.4が大細胞核に多く、Kv1.6が角状核に多く発現していた。パッチクランプ法を用いてカリウム電流成分を調べたところ、4-AP感受性の一過性のA電流と考えられる電流成分が角状核からは観察された。Kv1.4はA電流の構成要素の一つと考えられているので、PCRの結果と一致する。 カルシウム電流について調べたところ、角状核からは2nA程度の大きなカルシウム電流が観察された。この電流はオメガコノトキシンで約5割オメガアガトキシンで約3割の電流が抑制されたことから、主にNタイプが発現しておりその他がP/Qタイプであろうと考えられる。 角状核大細胞核両方の核で、電流注入を行って膜電位を過分極の方向に振るとSAGが認められたことからIh電流が存在すると推察される。近年、そのcDNAがクローン化されたので、その一つをプローブとして心臓洞房結節よりクローン化したところ、新たなcDNAクローン(HCN4)が単離出来た。その分布は、主に洞房結節に発現し、中枢神経系にも発現していた。その電気生理学的性質は、他のIhクローンに比べかなりゆっくりとした活性化速度を有していることを明らかにした。今後、蝸牛神経核のIhチャネルについて調べたい。
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