研究概要 |
Zitterラットは、中枢神経系における空胞変性とミエリン形成異常を呈する。これまでの連鎖解析により原因遺伝子であるzitter(zi)遺伝子はラット第3染色体q35の0.1cMの連鎖地図上にマッピングされている。平成11年度は、この0.1cMのゲノム領域をカバーするコンティグの作製と、zi遺伝子の存在領域をさらに狭めるために、large-insertゲノムクローンを導入したトランスジェニックラットの作製を行った。 まず、連鎖解析に用いたDNAマーカーPtpra、Oxt、TK71、TK42、TKest13を用いてラットP1、BACおよびPACライブラリーをスクリーニングした。得られたクローンのインサート両端の塩基配列を決定し、新たなプローブとして2回目のスクリーニングを行った。その結果、0.1cMのzi存在領域を完全にカバーする7個のP1クローン、2個のBACクローンおよび21個のPACクローンからなるコンティグを作製した。比較地図の利用とインサート両端の塩基配列のホモロジーサーチにより、このzi存在領域には2個の既知遺伝子(Oxt、Avp)と8個の機能未知の遺伝子(TKest01,03,13,30,41,63,65,69)が存在することが判明した。次に、コンティグ内のクローンの中から、互いにオーバーラップするクローンPAC65N9、BAC552L13を選択し塩化セシウム密度勾配超遠心によって精製後、そのDNAを環状のままWistarラットの受精卵に顕微注入した。PAC65N9については産子は得られなかったが、BAC552L13について3匹の産子が得られた。BAC552L13のインサート両端を検出するマーカーを用いて、DNA検定を行ったところ、1匹の雄ラットが導入BACクローンを持っていることが判明した。現在このラットをfounderラットとして、zitterヘテロラット(zi/+)と交配中である。今後はzi遺伝子をホモに持つ動物を作製し、突然変異形質の回復を観察することでBAC552L13がzi遺伝子を含むか否かを検討する。
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