研究概要 |
in vitro加水分解前のポリ(L-乳酸)(PLLA)試料の示差走差熱分析測定(DSC)より、試料作製時の結晶化時間(t_a)が長いほど結晶化度(x_c)が高く、結晶化温度(T_a)が高いほど融点(T_m)が高いことが明らかとなった。36ヵ月間のin vitro加水分解後は、t_aやT_aに関係なくT_mは低下するが、融解ピーク面積は増大する傾向が認められた。これは、in vitro加水分解により、結晶サイズ(L_c)低下するが、x_cが増加することを示している。36ヵ月において、初期に非晶であったフィルム(x_c=0)では29%、初期のx_cが63%と試料中最大であったフィルム(T_a=160℃,t_a=10時間で作製)では98%までx_cが上昇した。 ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により評価したPLLA試料のin vitro加水分解に伴う分子量の低下は、18ヵ月以降では、初期x_cの高い試料ほど大きくなった。140℃にて60分間結晶化させて作製したフィルムでは、加水分解時間24ヵ月以降で、分子量布曲線の分子量1x10^4付近に残存結晶領域に由来する特異的なピークが現われたが、非晶化したフィルムでは、分子量分布曲線の形状はそのままで低分子量領域に移動した。このことは、非晶領域中のPLLA分子鎖が選択的に加水分解・除去されていること、およびPLLAフィルムの加水分解が表面分解機構ではなく塊状分解機構で進行していることを示唆している。また、非晶化PLLAフィルムの分子量分布の形状に変化がなかったことは、厚みが2mm以上の試料の場合と異なり、中心部で加水分解が加速されることなく均一に加水分解が進行していることを示している。 球晶サイズは、in vitro加水分解によるT_m、x_c、および分子量変化に対してほとんど影響を与えなかった。
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