本年度の研究実施計画に基づき研究を行ったところ下記の進展があった。 IV型コラーゲンα5(IV)、α6(IV)鎖遺伝子のクローニングと発現ベクターの作成 マウスIV型コラーゲンα5(IV)とα6(IV)全長をコードするcDNAをクローニングした。そして、各クローンのcDNA断片をつなぎ、α5(IV)とα6(IV)のそれぞれの全長をカバーするcDNA断片を作成した。その全長断片を発現ベクターに導入し、α5(IV)、α6(IV)の発現ベクターの作成が完了した。 哺乳動物細胞株への遺伝子導入 CHO細胞の転写産物をNorthern blot法で解析した結果、CHO細胞はα5(IV)のみを産生することがわかった。つぎに、α5(IV)特異的なモノクローナル抗体でWestern blotを行ったところ、高分子量タンパク質が培養上清中と細胞層中に検出された。さらにこのタンパク質がコラーゲンであることを確かめるため、コラゲナーゼとペプシンに対する感受性について検討したところ、コラゲナーゼでこの高分子体は消失し、ペプシンで約50kDの分子を生じた。らせん会合体を形成するα1(IV)が同様の処理で50kDの分子を生じるという過去の報告例より、この50kD分子はα5(IV)のらせん会合体の存在を示唆するものとして、来年度引き続き解析を行う。 α6(IV)の発現ベクターをCHO細胞に導入し、定常的にα6(IV)を産生する株を得た。この株に対してNorthern blot法でα6(IV)転写産物の確認を行い、さらにα6(IV)に特異的なモノクローナル抗体を用いたWestern blot法で高分子量タンパク質の培養上清中と細胞層で検出により、α6(IV)の産生を確認した。 α6(IV)を導入したCHO細胞が産生するIV型コラーゲン分子らせん会合体に関する詳細な生化学的解析は来年度引き続き行う。
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