研究概要 |
本年度は,ナノチューブ電子エミッタの基礎特性である電子のエネルギー分布,輝度および放射角電流密度の測定のほか,電界イオン顕微鏡法によるナノチューブ先端構造の原子分解能観察,および超高輝度ナノチューブ光源管の試作を行い,以下の成果を得た。 1.ナノチューブ電子源のエネルギー分布,輝度および放射角電流密度 1本の多層ナノチューブから放出されて電子のエネルギー幅は330meVで,タングステンなどの金属エミッタ(半値幅約200meV)に比べ,約1.5倍広く,また,主ピークから低エネルギー側0.5eV付近に肩が観察された。1つの五員環(面積約4×10^<-16>cm^2)から数十nAの電流が得られたが,これは,放出電流密度に換算すると10^8A/cm^2になる。また,放射角電流密度として10^<-7>A/srが得られたので,輝度に換算すると加速電圧100kVにおいて10^<10>A/cm^2・sr以上に相当する。 2.電界イオン顕微鏡法によるナノチューブ先端構造の原子分解能観察 先端の閉じた多層ナノチューブをエミッタとし,水素,ヘリウムあるいはネオンを結像ガスとする電界イオン顕微鏡法により,ナノチューブ先端の炭素五員環を原子分解能で観察する事に成功した。また,強電界下における電界蒸発によるナノチューブ先端の破損も観察した。 3.超高輝度ナノチューブ光源管の試作 高電圧蛍光表示管をベースにその構造に改良を加えるとともに,陰極にナノグラファイバーという特殊なカーボンナノチューブを使用することにより,超高輝度(1×10^6cd/m^2)の光源管を試作することに成功した。この光源管の輝度は従来の高電圧蛍光表示管のそれの10倍を超える。
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