研究概要 |
各種工業用金属材料の表面処理は,機械の長寿命化,トライボロジー特性の改善,省エネルギー化などに貢献してきている。また,超微細機械の開発に際しても、各種コーティング処理や金属薄膜材の特性,たとえば疲労強度特性の改善が不可欠である。一方,最近の微視的観察装置の性能向上は著しく,プローブ顕微鏡やレーザー顕微鏡などが開発され,材料の微視的構造や変形,強度などに関連した諸研究課題に応用されつつある。しかしながら,個別企業,特に中小企業においては,これらの機器を導入して強度やトライボロジー特性の改善に取り組んでいるところは少なく,この点地域連携研究に着手し,地元企業の技術レベルの向上をはかる。 平成12年度には,3次元表面微細形状測定機を導入した。これらの購入機器を各分担連携研究で共通的に使用するため,使用研修会を開催し,習熟をはかった。また,本テーマに関する研究会を2回開催した。その他,下記の各項目について研究を進めた。 ・結晶粒径を3種類に調整した圧延鉄膜材(膜厚100μm)の疲労試験を行った結果,圧延による結晶方位や結晶粒径がき裂の発生・伝ぱには大きく影響するなど,薄膜材の疲労特性には組織との関係が重要であることが示された。 ・多結晶金属表面の微視的構造とその塑性変形に伴う変化をプローブ顕微鏡,レーザ顕微鏡,微小表面形状測定機等によって測定し,変形機構解明のための基礎的データを得た。 ・浸炭硬化鋼,ステンレス鋼,耐摩耗性鋼にNi-Pめっき,浸硫処理などの表面改質を施し,これらの転がり疲れ特性およびスカッフィング特性を実験的に明らかにするとともに,これらに及ぼす表面改質の有効性を解析的にも検証した。 ・放電加工後,電極をチタンに交換し,加工液の中にグラファイト粉末を混入して正極性加工を行うと,放電加工面に炭化チタンの薄膜ができること,この膜は傾斜的な硬度分布を有する事等が明らかとなった。 ・CBN砥石を用いた高精度輪郭研削加工法を開発した。1研削サイクル中の工具弾性変形量の変動を抑制する新しい背分力一定研削加工法を開発することで,工作物半径比によらずほぼ一定の工作物表面粗さが得られる高精度輪郭加工を実現できた。
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