研究概要 |
本研究では,目的物質を抗原抗体反応を利用して電気化学的に検出することを目的としているが,そのための反応種の検討を行った。アルカリフォスフォターゼ(ALP)で標識化した抗体による抗原の測定について調査を行い,この酵素反応の基質物質p-aminiphenyl phosphate(PAPP)及び生成物p-aminophenol(PAP)の電気化学的特性を調べた。また,抗原を特異的に測定するためのプロトコルの調査を表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて行った。これらの基礎的データを踏まえ,ガラスチップ上,及びキャピラリ上に抗体を固定化したデバイスを作製し,これらによる検出特性を調べた。ガラスチップには,目的物質を選択的に捕獲するモノクローナル抗体を固定化し,ここに試料を注入して目的物質を捕獲する。さらに標識化抗体を固定化してこの酵素基質にあたるPAPPを注入して生成したPAPを同一チップ内の電極で計測した。一方,キャピラリの方は,ガラス上に直接抗体を固定化し,100μlの各種試薬溶液と反応させて電気化学セルに注入して測定を行った。デバイスの評価は,比較的入手しやすいイムノグロブリン(IgG)を試料として用いて行った。今回特にキャピラリを利用してデバイスの試作に成功し,生体への直接挿入可能なニードル型の検出器を製作することができた。一方,有明海沿岸の土壌や生息魚の有機塩素化合物による汚染状況を調査し,湾の奥部でより高濃度の汚染が確認された。今後これらを複合的に組み合わせ,実試料でのデバイスの応用へと展開を図っていく予定である。
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