「スーパー抗体酵素」を用いた新型バイオセンサの開発と実用化

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11793007
• 研究機関: 広島県立大学
• 研究代表者: 宇田 泰三 広島県立大学, 生物資源学部, 教授 (20232837)
• 研究分担者: 藤井 亮治 (株)福山臨床検査センター, 研究部, 部長 ; 一二三 恵美 広島県立大学, 生物資源学部, 助手 (90254606) ; 江頭 直義 広島県立大学, 生物資源学部, 教授 (90094060)
• キーワード: 抗体酵素 / バイオセンサ / 電極 / 遺伝子 / タンパク / 抗原

研究概要

本年度の研究計画は1)「スーパー抗体酵素」が「なぜ」酵素活性を発現するかについて、立体構造を含め根本的な視点から解析を行う。特に、金属イオンの役割、触媒三ツ組残基の有効性について明らかにする。2)「スーパー抗体酵素」により抗原ペプチドはアミノ酸に変化する事を利用してアミノ酸検出電極を試作誌、新しいセンシングシステム作りを行う。3)H.pylori菌に対する「スーパー抗体酵素」の探索に取りかかる。それにはこれら抗体の立体構造解析から触媒三ツ組残基を持つものを検索する。4)触媒三ツ組残基をもつ抗体に何か法則性があるか究明する。という主に4項目であった。
1)については「スーパー抗体酵素」と抗原ペプチド(TP-41 or YP-41)との反応開始時にEDTAを数10μM添加すると「スーパー抗体酵素」のペプチダーゼ活性が完全に消失する事。そして30μMまではEDTAの添加濃度に依存してペプチダーゼ活性が抑制される事。この系に金属イオンをさらに添加すると再度ペプチダーゼ活性が完全に回復する事。この時の金属イオンとしてはFe,Zn,Caが有効である事。EDTAの添加時期の影響を調べると、誘導期に添加したものは100%の抑制効果を示したが、活性期に添加した場合は抑制効果がかなり減少する事。などが判明し、金属イオンは「スーパー抗体酵素」の活性サイトを構成しているのではなく、「スーパー抗体酵素」が酵素活性を持つような構造変化を促進する役割を担っているものと推定された。2)についてはアミノ酸とやペプチドとRu錯体との反応により発光する事を利用した新しいセンシングシステムの原理を確立したところである。3)についてはH.pyloriに対する抗体の遺伝子解析および立体構造解析から1クローンが有望な「スーパー抗体酵素」となる可能性があることを突き止めた。4)についてはPDBに登録されている抗体のアミノ酸配列をランダムに分子モデリングを行っている。これまで50数種類の抗体についてその立体構造を構築しているが、それほど低くない確率で触媒三つ組み残基様構造が抗体に現れる事が分かった。

研究成果

• [文献書誌] 宇田泰三: "新規バイオ素子に向けた抗原・抗体の分子設計とセンサへの応用"化学センサ,Suppliment B. 16(1). 7-13 (2000)
• [文献書誌] 宇田泰三: "「スーパー抗体酵素」と免疫測定法への期待"免疫科学測定法研究会年報. 第4号. 75-80 (2000)
• [文献書誌] Hifumi,E.,Okamoto,Y.,Uda,T.: "Highly selective and sensitive SPR immunosensor for detection of methamphetamine."Appl.Biochem.Biotech.,. 83. 209-220 (2000)
• [文献書誌] Hifumi,E.,Okamoto,Y.,Uda,T.: "Super Catalytic Antibody [I] : Decomposition of targeted protein by its antibody light chain."J.Biosci.Bioeng.. 88. 323-327 (2000)
• [文献書誌] Ishimaru,M.,Morikawa,K.,Hifumi,E.,Itoh,T.,Uda,T.: "Analysis of the antigen recognition sites of anti-methamphetamine monoclonal antibodies (II) 〜unique feature of MA-3 Antibody."J.Biosci.Bioeng.. 89(5). 492-494 (2000)
• [文献書誌] Hifumi,E.,Ohara,K,Niimi,Y.,Uda,T.: "Removal of catalytic activity by EDTA from antibody light chain."BioMetals. 13. 289-294 (2000)