研究課題
廃蛍光管には、ハロ燐酸カルシウム蛍光体を使用している白色蛍光管と、赤、青、緑の希土類蛍光体を混合使用している三波長形蛍光管があり、最近、演色性が良く効率も高い希土類蛍光管の需要が増大している。廃蛍光管は、白色蛍光体と希土類蛍光体の混合粉砕試料である場合が多く、安価に希土類元素を回収するためには、希土類蛍光体を濃縮後、希土類元素を侵出、分離回収することが必要である。そこで、本年度は、各種蛍光体の基礎性状測定、各種選別法の調査、整理および適当と思われる選別法による選別実験、希土類蛍光体からの希土類元素の侵出、浸出液からの希土類元素の分離回収、高純度化等について検討を行った。主な成果は、以下のようである。1)代表的な希土類蛍光体の等電点は、赤色蛍光体がpH7.7、緑色蛍光体がpH6.8、青色蛍光体がpH4.8であり、白色蛍光体は今回測定したpH範囲では常に負の値を示したことから、捕収剤として陽イオン性あるいは陰イオン性補収剤を用いることにより、浮選、水中造粒等により白色蛍光体と希土類蛍光体の分離回収が可能と考えられる。2)陽イオン性補収剤を用い廃蛍光体模擬試料についてpHを変化させ浮選を行ったところ、pH2.5付近で、白色蛍光体を優先的に浮遊させ、希土類蛍光体をテーリングに濃縮することができた。3)希土類元素の相互分離及び不純物除去を行うため、酸性エステル形の抽出剤を用いた溶媒抽出についての検討を行った結果、抽出平衡水素イオン濃度をpH1.0以上にすることによりCa、P、Alなどの不純物を除去できることがわかった。また、pH0.5〜pH0.8において希土類元素(Y、Eu)の分離係数が最大となり、多段抽出法を用いることにより十分に分離が可能であることがわかった。4)蛍光体スラッジから希土類元素を効率よく侵出させるため、侵出条件の検討を行った。浸出液3mol/l硫酸、侵出温度70℃の条件で90%以上の侵出率が得られた。また、長時間の侵出、固液比が小さい(少量の侵出液)場合に、水酸化物沈殿を生成して侵出率が低下するため、侵出時間は約1時間、侵出液は蛍光体スラッジの30倍が適当であることがわかった。
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