研究課題/領域番号 |
11793013
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐野 嘉拓 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (10001463)
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研究分担者 |
田畑 昌祥 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50091476)
浦木 康光 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (90193961)
篠原 邦夫 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60001294)
岸本 崇生 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (60312394)
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キーワード | 寒冷地バイオマス産業 / シラカンバ / 常圧酢酸抽出 / グリーンケミカルズ / リグニン / セルロース / ベチュリン / 籾殻ボード |
研究概要 |
北海道に大量に自生する寒冷地早生樹であるが、有効利用されていないシラカンバを主な原料として、グリーンケミカルス、ファインケミカルス、生分解性プラスチック、バイオエネルギーなどを製造するバイオマス変換産業を寒冷地に創設し、寒冷地に新たな産業を振興するための基礎的研究を行った。 シラカンバを常圧酢酸抽出法により、セルロース、リグニンおよび糖類に分離した。セルロースから生分解性ポリマーの原料である酢酸セルロースを経済的に調製する技術を確立した。セルロースは酵素糖化して得られるグルコースからグリーンケミカルスが調製できる。糖類は脱色・精製・還元し、キシリトールを高い収率で調製することができた。リグニンをケン化し、エポキシ化した樹脂を、農産廃棄物である籾殻と混合し、保温性、遮音性、防水性に優れた籾殻成形品を製造する技術を確立した。また、リグニンと古紙を混合し、熱圧プレスすることによりリグセル成形品を作成する技術を確立した。 シラカンバ外樹皮から30%の収率で高価なベチュリンを調製する技術を確立した。ベチュリンを高度な用途に利用するために、ベチュリンの官能基を化学修飾し、生分解性界面活性剤、サイズ剤、紙力増強剤、ポリアミドの製造を行った。また、抗エイズ剤の出発物として知られるベチュリン酸の新たな合成法を検討した。外樹皮からベチュリンを抽出した残りの成分であるスベリンから簡便な方法でアスファルト軟化剤を調製した。内樹皮の化学成分を検索し、内樹皮からケミカルスを製造する基礎的知見を取得した。 これらの成果は寒冷地に特異的に繁茂するシラカンバ樹木に含まれる全ての化学成分を高度利用するゼロエミッション型バイオマス産業の創設を示唆する。特に、樹皮成分のベチュリンは、シラカンバにのみ特異的に存在するから、ベチュリンを中核としたシラカンババイオマス変換工業は寒冷地に特異的な産業として発展できる。
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