研究概要 |
先進国における大量消費・大量廃棄や途上国でみられる人口爆発が今後も続く限り、21世紀に地球規模での環境負荷の増大,自然の資源・エネルギー制約が顕在化し,人類社会や地球生態系は大きな影響を受けると予想される。このため、廃棄物においても回収可能なエネルギーの有効利用を行うとともに,省資源,省エネルギーに努力することは今日の重要な課題である。そこで本研究では,下水余剰汚泥の処理方法として現在広く普及している嫌気性消化法をより明らかにすることにより,高速・高効率化させて下水浄化センターからメタンガスとしてエネルギーを有効的に回収する技術を創成することを目的としている。 嫌気性消化微生物群集の解析に16SrRNAを標的とした蛍光標識オリゴDNAプローブのIn situ Hybridization(FISH)を適用したが,蛍光強度が極めて弱く検出・定量は困難であった。この原因は微生物の活性が低くて,RNA含量が少ないためであることを明らかにし,DIG標識に改良して検出を試みたものの,新規FISH技術の確立までにはまだ至っていない。そこで,dot blot hybridization法で硝化汚泥中のメタン生成細菌の定量を行い,メタン生成能とメタン生成細菌量との関連性を検討している。 また,中温および高温の消化汚泥からDNAを抽出し,16SrDNAをPCR増幅した後,クローニングした。ランダムに選んだクローンに制限酵素を用いてRFLP解析し,各パターンのクローンについて塩基配列を決定している。解析の途中であるが,クローンライブラリーの構築より,消化汚泥内の微生物群集の全容が見えてきており,中温と高温の消化汚泥の違いも分かってきた。今後,加水分解酵素活性を測定し,微生物群集との関連を明らかにすることで,余剰汚泥の可溶化および消化メタン生成速度を促進化する技術が示唆できると思われる。
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