研究概要 |
本研究は,富栄養化した手賀沼の湖沼水を,低濃度培養液とみなして作物を栽培するシステムの構築を目指したものである.本年度は,手賀沼に浮かべた小型フローティングベット(イカダ)と湖岸に設置したDFT及びNFTシステムにおいて,エンサイを中心とした葉菜類の栽培試験を年間を通じて実施した.エンサイは6月下旬に定植した.栽培は茎葉部を刈り取り,その後再生した茎葉部を再び刈り取るという方法で行った.この方法で,7月下旬から10月下旬までの3ヶ月間に渡り,収穫することができた.全期間を通じての生産量は,DFT>NFT>イカダとなった.これらの結果から,イカダによる栽培は,風や波などの影響が大きく,栽培システムを実用化する場合には,湖岸に設置する形態の方が適していると思われた.NFTシステムで栽培したエンサイは,生育後半にチャンネル内で根詰まりを起こし,生育が停止した.NFTの構造の検討は次年度の課題である.冬季に適した葉菜類を選択する目的で12月から2月にかけて,上記3システムでの8種類の葉菜類の栽培試験を行ったが,いずれの種類も厳寒期である1月には枯死した.このことから,手賀沼湖沼水を用いて無加温で野菜栽培を行うのは難しいことが確認された. また,8月にタイ・バンコク周辺でエンサイの水上栽培を行っている地区の水質の予備調査を行った.この結果,エンサイの栽培は手賀沼よりも低い硝酸態窒素濃度条件下でも無施肥で行われていることがわかった.この予備調査に基づいて3月にはバンコク周辺で,エンサイを川,運河,水田で栽培している地区において,水質及び植物体内無機成分の分析用サンプルを収集した.これから,これらの成分を分析する予定である.また,工場排水が流れ込んでいる地区でも栽培が行われていたことから,無機成分と併せて重金属濃度の分析も行う予定である.
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