研究概要 |
クロダイ (1)クロダイについては、単離したマイクロサテライト(以下MS)、4遺伝子座を用いて、西日本および韓国クロダイ、および広島市水産振興協会で生産された種苗の集団解析を実施した。その結果、クロダイ各集団間には遺伝子頻度の異質性に有意差が認められなかった。従ってクロダイは明確な地域集団を形成していないと結論した。また、放流種苗と天然種のヘテロ接合体率の比較から、放流種苗は天然種に匹敵する遺伝的多様性を保持していることが判明した。(2)広島市水産振興協会で生産された放流種苗とその親魚(51尾)について親子鑑定を行った。その結果、種苗に寄与した親魚は雄親26尾中21尾、雌親25尾中23尾、親全体で80%以上が、産卵に関与していた事が明らかとなった。この値はマダイやヒラメに比べると極めて高い。この時、クロダイ親魚の集団の有効な大きさは40程度と算出された。この値はFAOの提示した基準値より若干低い事が明らかとなった。従って、クロダイの親魚数は80尾程度が望ましいと考えられた。(3)MSによる放流種苗の親子鑑定技術を応用し、広島湾に放流された種苗の追跡調査を実施した。その結果、従来鰭カットや耳石標識で標識放流されたクロダイと同様な分散・生残率が確認された。従ってMSが放流魚の遺伝マーカーに有効であることが確認された。 メバル・マナマコ ストレプトアビジン結合型磁気ビーズを用いて,マイクロサテライト領域を含むDNA断片を選抜し,濃縮ライブラリーを作成する方法を確立した。この方法を用いてメバル,マナマコよりマイクロサテライトDNAを単離した。その結果、両種とも20程度のMSが単離された。MSの多型性を広島市水産振興協会で生産された放流稚ナマコと天然メバルを用いて調査した結果、極めて多型性に富んでいることが判明した。今後、単離したMSを用いて、クロダイ同様、集団解析、放流種苗の親子艦別、放流魚の追跡調査が可能と考えられ、遺伝資源としてのメバル,マナマコの資源管理に有益であろう。
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