研究課題
特別研究促進費
地球規模環境変動への関わりが大きいとされる南極海の海洋環境の中長期的変動について、これまで日本南極観測隊による観測が継続されてきた南極海インド洋区に焦点をあて、国内外に蓄積された観測データを基に解析を実施した。昭和基地への往復航路上に限られた定常的な観測結果ではあるが、インド洋区での海水温の昇温傾向が初めて確認され、また、海表層の植物プランクトン現存量に大きな経年変動が認められた。また、動物プランクトン現存量の変動を解析する上で、連続プランクトン採集器を用い、オーストラリア側と共同で現場観測とデータ解析を実施した結果、動物プランクトン量にも経年変動が認められ、また、同採集方法が中長期的モニタリング観測に有用であることが国際的にも認められた。更に、これら海洋物理と海洋生物をリンクする要因である栄養塩濃度の時空間変動を解析した結果、インド洋区において表面珪酸塩濃度が平均的に高い海域と低い海域とが交互に存在することを初めて指摘した。その変動要因は近年話題となっている南極周極波動現象のような大気振動現象に呼応しているといえる。これらの因果関係を明らかにするには関係する要因のプロセス研究が不可欠であり、そのための現場観測に参加した。オーストラリアの研究者を中心に、国際共同観測体制を作り上げ、2001年から2002年にかけての夏期シーズンに日豪から合計4隻の観測船を導入した時系列観測を実現した。中長期変動解析の鍵となるパラメーターをコア観測項目とし、4航海を通して標準化した観測方法を世界に先駆けて初めて導入した。これまでスナップショット的な観測が主体であったが、初めて夏期間を連続的にカバーした結果が得られ、今後の中長期変動解析の発展に大きく貢献する成果であった。また、データ解析、及び、現場観測を通して、国内外の南極海洋研究者が分野横断型の共同研究体制の基盤を築き上げることが出来たことは大きな成果である。
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