研究概要 |
(1)集中豪雨による広島県土砂災害に関する調査研究:広島県における土砂災害の主な原因は,前線による40〜80mm/hという豪雨が,水分を含むと著しく強度が低下する性質を持つまさ土斜面に2〜3時間集中したことである.この豪雨は狭い幅で帯状に生じており,この集中には山地地形の影響があったと考えられ,レーダー雨量計は集中豪雨の移動や強さを知る上で有効であった(福岡・渡邊).今回の雨量は広島県で過去に何度か記録されてきた豪雨と同程度である(宝).降雨量をもとに地中水分量を解析することで土砂災害の危険性を予測できる可能性は高い(福岡・渡邊,森脇).土砂災害を生じさせた降雨以外の原因として,地質構造や地形,斜面勾配等の他,花崗岩のマイクロシーティングを形成が挙げられる(千木良).土石流の特徴として,勾配の急な個所で崩壊した土砂が勾配の緩い場所で堆積したため,大きなレキを含まない泥流が流木とともに流下して被害をもたらしたことが挙げられる(海堀,江頭).土石流の流動に伴う最大水位や土砂の堆積厚等は,土石流解析モデルによって表現可能であり,土石流解析によってハザードマップの作成,対策効果の検討が可能である(江頭).平地が少ない広島県では山地部まで住宅開発が及んでいる.災害を受けていない新しい住宅地区では防災意識は高くない.今回の調査によれば,降雨量等の事前情報だけでは住民は避難行動を採らないが,濁水やがけ崩れ等の確認や避難勧告等によって避難行動を採る可能性が高い(奥村).したがって,突発的に発生する土砂災害を少なくするためには,防災意識を高め,降雨量と危険性の関係を衆知させるとともに,災害発生危険時には情報をいかに正確に素早く伝達するかが肝要になる. (2)福岡市における都市型水害に関する調査研究:北九州に生じた豪雨は寒冷前線付近に発生した暖域レインバンドによるものであり(守田),70〜100mm/hというものであった(戸田,橋本,多賀).このような豪雨は近年発生件数が多くなっている(守田).博多湾の満潮と豪雨による御笠川の増水が重なり,10時頃から御笠川が氾濫して地盤が低いJR博多駅周辺に氾濫被害が生じた(戸田,橋本,多賀).JR博多駅周辺に密集したビル地下室,地下街,地下鉄へ氾濫水が浸入し,逃げ遅れた死者が発生し,水害に対する都市構造の脆弱性が露見した(多賀).地下への氾濫水侵入防止には,止水板や土嚢などの使用や地下への入り口を通路面よりも高くしておくことなどが有効である(橋本,戸田,多賀).地下施設の所有者,管理者,使用者の不一致により,情報の伝達や水害への対応が遅れており,的確な情報伝達方法及び指揮系統が必要である(多賀).今回の災害は,豪雨と流域の都市化による流量の増大に,博多湾の満潮が重なったことが原因であり(戸田,多賀),対策としてまず都市化を考慮した河川計画と河川整備,総合治水対策を推進することが望ましい(戸田).また,地下への氾濫水侵入を防止するハードの設置と共に,地上で何が起きているか分らない地下への情報伝達,氾濫ハザードマップの衆知や地下空間における防災意識向上が必要であろう(戸田,多賀).
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