研究課題/領域番号 |
11832001
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 純一 北海道大学, 文学部, 教授 (40091409)
|
研究分担者 |
吉野 巌 北海道大学, 文学部, 助手 (60312328)
懸田 孝一 北海道大学, 文学部, 助手 (70281764)
|
キーワード | 音楽知覚 / 知覚的体制化 / 調性 / 拍節 / メロディ / 感性 / 認知心理学 / 認知科学 |
研究概要 |
本研究の代表者である阿部は、従来から、拍節的体制化の過程と調性的体制化の過程とをそれぞれ独立にモデル化することを試みて来ている。具体的に云えば、音符(個々の音符は音高と音長の離散値をもつものとする)の系列を入力データとして採り、各要素音の音長(音価)情報のみから"拍"や"拍子"を解釈していこうとするコンピュータ・モデル、および、各要素音がもつ音高情報のみからその音列(メロディ)の"調"を解釈していこうとするコンピュータ・モデル、の提案をそれぞれ進めてきた。このように両過程を別々にモデル化しようとする理由は、問題の単純化ということもあるが、それ以上に、人間のメロディ知覚において両過程が基本的に独立的に遂行されていると推測されることにある。しかしながら、聞き手の心理体験としては、拍節構造と調性構造とが別個に知覚されるということはなく、メロディという一つの対象が知覚されるだけであり、当然、その両方の知覚処理が心内でどのように統合されているかということが解明されなければならない。今年度は、その問題に取り組み、心理学的実験の結果から、メロディの知覚的体制化は、拍節的体制化の処理がより基本にあって、その処理の結果を踏まえた上で調性的体制化の処理がなされるという示唆を得た。(なお、この示唆を得るには、音楽知覚についての直接的な研究の他、人間の言語処理過程における統語処理とプロソディー処理との関係について行った実験的研究からの知見も参考にした。)そして、その示唆を基に、拍節的体制化の処理と調性的体制化の処理の統合過程についてのコンピュータ・モデルの構築を進めた。現在は、そのモデルのシミュレーション結果と、実験から得られた人間の反応結果とを比較照合を進め、モデルのさらなる改良に努めているところである。
|