研究概要 |
私たちが物を詳細に見るときには,中心視野を使う。しかし,外界を広く大きく見るときには周辺視野が重要になってくる。周辺視野では,中心視野に比べて視覚の時空間感度特性が異なっているので,大視野ディスプレイなどで臨場感のある画像を有効に呈示するには周辺視野特性を十分に考慮する必要がある。そこで,本年度は以下の項目について周辺視野特性を測定した。1.眼球運動を行いながら周辺視の感度を測定できる装置により,跳躍眼球運動と追従眼球運動中の周辺視野における空間定位および特徴,変位弁別感度測定を行った。その結果,跳躍眼球運動直前において,跳躍眼球運動と同方向側の視野で特徴弁別課題の正答率が反対方向側の視野よりも向上し,視覚系は跳躍眼球運動の目標点にある物体の特徴をより詳細に弁別できる特性を持つことがわかった。また,跳躍眼球運動直前から直後にかけて,眼球運動の目標点付近に向かう定位のずれが起こること,つまり視空間の圧縮が生起すること,さらに,追従眼球運動時には,跳躍眼球運動時と違って眼球運動の目標点付近に定位がずれないことがわかった。追従眼球運動時とサッケード時では周辺視野での空間定位の特性が異なることを明らかにした.2.全視野を覆う半球ドーム状の視野計により周辺視野でのカテゴリカル色知覚を測定した。その結果,周辺視野では色の見えは連続的には変化するものの,カテゴリカル的にはホほとんど変化しないことが分かり,周辺視野での色の見えに対する感度特性が明らかとなった。3.大視野での視覚刺激呈示を実現するため,実時間で生成した画像を投影用魚眼レンズ付きの液晶プロジェクタによってドーム型スクリーンに投影する装置を作製した。魚眼レンズは画像をドームの半球全体に投影でき,観察者は180度の周辺視野を得ることができた。被験者の眼球位置を計測し,実時間で視覚刺激が眼球の位置に同期して呈示できた。
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