研究概要 |
本研究では,硬さ判定は指先の接触部分における物体と指先の皮膚の相対的な変形が重要な指標になると仮定し,試料を指先に押し込む深さ,スピード等接触状態を変化させた時の指先にかかる力を測定し,その接触力と硬さの判断との関係を調べることを目的とした. 本年度は,接触条件によって実際の「主観的な硬さの感じ方」がどのように変化しているかを明らかにするため,指と試料の接触状態を,試料の材質,直径,押し込み深さ,押し込み速度を操作して変化させ,その接触条件が基準条件に対してシェッフェの一対比較による7段階の硬さ評価にどのように影響するかを調べた. 実験方法は,被験者は右手示指に傷や障害の無い健常成人10名を対象に,軟質ゴムスポンジ,SBRゴムスポンジ,アクリル樹脂の3種類の試料を,試料直径を5mm,10mm,20mm,押し込む速度を1mm/s,10mm/s,100mm/s,押し込む深さを1mm,2mm,3mmの各3種類の組み合わせで,計81条件で指に接触させた際に,「1:最も軟らかい」の評価にあたる条件(軟質ゴムスポンジ・直径5mm・押し込み深さ3mm・押し込み速度1mm/sの組み合わせ)を基準の硬さとして,その後に示す試料が「1:最も軟らかい」から「7:最も硬い」までの7段階でどのくらいの硬さに感じるかを答えさせた. その結果,以下のことが得られた. ・ 試料の材質が硬くなるほど,試料径が増すほど,また押し込み深さが深くなるほど試料と指の接触力と試料に対する硬さの評価は増加する. ・ 接触力と硬さ評価の間には相関があるが低く,硬さ評価には接触力以外の要因が関与していることが示唆された. ・ 押し込み速度が速くなると,接触力には変化がないが,硬さの評価はより硬い方にシフトする. これらのことから,速度が遅い時と速い時では試料の硬さを感知する触覚受容器の種類が異なるために,硬さ評価が変化したことが示された.
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