研究概要 |
「臨場感」という感覚の性質を明らかにすることを目的とし,平成11年度は聴覚刺激のみを用いて,聴覚臨場感について検討を行い,その多次元性を明らかにした.平成12年度は視覚情報が聴覚臨場感に及ぼす影響という観点から視聴覚臨場感について検討を行うべく,聴覚情報はバイノーラル再生方式により提示し,また視覚情報は,50インチディスプレイにより提示し,以下の2種の実験を行った. 1.内外で収録した17種類の刺激について,まず音だけを提示した場合の臨場感を一対比較法により測定した.続いて,視覚情報も同時提示した条件下で同様の実験を行った.両実験の結果を尺度構成して得た臨場感尺度値について比較検討を行った.その結果,映像が音源を含むなど録音場の状況を正確に伝えるものである場合,および付加された映像が動的な場合には臨場感が高くなる傾向が顕著であることを示した. 2.屋外で収録した8種の刺激のそれぞれについて,再生音圧を5段階に変化させた場合の臨場感を一対比較法により測定し,その結果を尺度構成して臨場感尺度値を求めた.この測定を,映像を提示せずに行った場合には,音圧レベルの増加とともに単調に臨場感尺度値が上昇した.これは,臨場感を構成する複合要因のうちの量的因子が現れたものと考えた.一方,視覚情報を同時に提示した場合には,本来の音圧レベルよりも5dB程度高い場合に臨場感尺度値が最大値となった.これは,臨場感のうちの情報因子(情報が自然に伝達されているか否か)と迫力因子が複合的に現れたものと考えた. 以上を総じて,曖昧な感覚とされてきた臨場感について,多次元的な性質を明らかにした上で定量的な解析を行った.
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