1.音声聴取時の外来雑音に対し聴衆が感じる"うるささ"の心理的評価値を説明するにはどのような評価指数を用いれば最も有効かを検討する。そのためのデータを採取する目的で、先ず、様々な音声信号及び中心周波数の異なるオクターブ帯域制限白色雑音・疑似音声無意味雑音・実際の音声雑音など種々の外来雑音を用いて音響心理実験を行なった。その結果、次のような新たな知見が得られた。 (1)信号対雑音比(SN比)が良好な場合は、音声信号を同程度に聞き取れるとしても外来雑音がもつ周波数スペクトル形状の差によって雑音に対する"うるささ"の心理的印象がかなり異なってくる。 (2)雑音の周波数成分が1〜2kHz付近に集中している場合には、SN比が低下するにしたがって、雑音がうるさく感じる度合いが増すと同時に音声聴取成績も低下する。 (3)音声聴取成績は音場が固有にもつ残響時間に大きく依存するのに対して、雑音に対する"うるささ"の心理的印象の方は残響時間にはさほど影響されない。 2.上記の音響心理実験で得られたデータをもとに、信号対妨害雑音比・スペクトル距離・明瞭度指数等の各種評価指数を採り上げ、これらの評価指数と雑音に対する"うるささ"の心理的印象との関連性を調べた。その結果、雑音に対する"うるささ"を議論するための評価指数としてはスペクトル距離が最も適しているとの見通しが得られた。
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