研究課題/領域番号 |
11833002
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上島 励 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (20241771)
|
研究分担者 |
武田 正倫 国立科学博物館, 動物部, 部長 (20000143)
雨宮 昭南 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30011670)
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80251411)
青木 優和 筑波大学, 下田臨海実験センター, 講師 (70251014)
西川 輝明 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (50126885)
|
キーワード | 底生動物 / 伊豆半島 / 無脊椎動物 / 多様性 / 動物相 |
研究概要 |
静岡県下田市の鍋田湾から吉佐美沖にかけての水深3m-150mの範囲において、砂泥底から岩礁に至る様々な底質の約50地点のドレッヂ調査を行い、各地点で得られた底生動物を採集した。肉眼サイズの動物は全て採集して固定し、動物門ごとにソーテイングしたところ、約3000点の底生動物標本が得られ、これらの標本については各分類群の専門家による同定、分類学的研究が行われている。今回の調査で得られた特筆すべき動物としては、以下のようなものが上げられる。 1)かつては日本各地で普通にみられたが現在は採集が困難になったナメクジウオ、シャミセンガイが多数得られた。特に、シャミセンガイは殻長5mm前後の幼弱個体が多数得られ、この海域では順調に繁殖していることが確認された。 2)半索動物のギボシムシの一種、軟体動物腹足類のタマガイ科の一種、イトカケガイ科の一種、多板類のサメハダヒザラガイの一種など未記載種と思われる動物が多数得られた。これらの動物の一部は下田近海以外の地域からは発見されておらず、この海域の固有種の可能性のあるものが含まれる。 3)二枚貝のヤマホトトギス、ノジホトトトギス、ウスハマグリ属の一種など多数の絶滅危惧種の生息が確認された。これらの二枚貝類は近年における採集記録がほとんどないため、生態が不明であったが、外洋に面した内湾的環境に生息することが初めて確認された。 今回の調査で得られた動物群集は、本州中部の大平洋岸の浅海域に見られるもので、暖海域要素が多く認められる。また、この海域では、上記のような希少種、絶滅危惧種が多数生息していることが明らかになった。今回の動物相調査はこの海域の貴重な底生動物群集の保全を行う上で貴重なデータになると考えられる。 また、学術的に貴重と思われる種類や絶滅危惧種についてはゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNAライブラリーを作成した。これらの動物についての分子遺伝学的解析は現在進行中である。
|