本研究の目的は、ある程度地理的に隔離されている間隙性線虫類の個体群間で、遺伝的な交流がどの程度行われているのかを、両個体群に属する複数個体の、進化速度の早い領域の塩基配列を解析し、その遺伝的組成の類似度に基づいて、分子生物学的側面から明らかにすることと、両個体群に存在するであろう遺伝的隔離は、形態の表現形にどのような差となって現れているかを、電子顕微鏡レベルでの微細形態から明らかにすることである。 本年度は、研究の材料であるMeyersia japonicaを、畠島および瀬戸臨海実験所北浜で個体数が増大する夏期に採集し、実験室に置いて洗い出し法により動物を分別し、これらの解析を試みた。分子生物学的解析では、PCR法のプライマーの設計に手間取ったが、一応有望な領域のDNAを増幅することが可能になったので、12年度にはデータを確実に出せる態勢が整った。しかし、現在までに成功している方法は、結果を出すのに時間と手間がかかるので、平成12年度は、近年急速に利用が進んでいる、DGG法を本研究に応用することも、視野に入れていきたい。電子顕微鏡観察では、資料は着実に増えているが、今のところ両個体群に差を見いだすには至っていないので、平成12年度はより詳細な分析を試みたい。 また、本研究では台風の直前と直後で採集をして、個体群組成の変化を追跡する計画だが、平成11年度には、台風の強い影響を受けなかったため、このようなサンプリングはできなかったので、平成12年度にはそのような採集を行いたい。
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