平成12年度は11年度に引き続き、コガネムシ上科の各分類群に関して1.DNA、および形態を用いた系統解析、2.消化器官の解剖学的検討、3.幼虫の飼育実験と成虫の産卵選好性に関する実験、4.餌資源中の炭素・窒素比の測定・比較、5.昆虫の身体中の安定同位体比の測定・比較を行った。 このうち、すべての議論の根幹となる1のコガネムシ上科の系統解析に関しては、まず、DNAによる系統解析の一貫として、平成12年度はアカマダラセンチコガネ科やアツバコガネ科を解析に加え、ミトコンドリアの16SリボソームRNA遺伝子に基づくコガネムシ上科の科レベルでの系統樹をほぼ完成させることができた。また、同じく16SリボソームRNA遺伝子を用いて全世界のカブトムシ亜科の系統解析を行った。一方、形態を用いた系統解析に関しては、イギリスの大英自然史博物館とオックスフォード大学博物館を訪れ、所蔵されているコガネムシ上科のタイプ標本の調査を行い、これを解析に反映させた。 2〜4の調査研究項目に関しては、従来から飼育、各種分析を行ってきた腐朽材食性のコガネムシ上科以外の材料として、腐植物食性であるテナガコガネ類の幼虫の餌腐植物の炭素・窒素比の測定を行ったとともに、シロアリの巣中に見出されるマンマルコガネ科の幼虫に関して、シロアリとの関連について飼育観察と炭素・窒素比の分析の両面から調査を行った。さらに、海洋島に見られる特殊な食性を示すコガネムシ上科の群についてハワイ諸島においてサンプルの採取を行った。 平成12年度にはこれらの調査研究成果の一部を国際昆虫学会第21回大会(ブラジル)や日本昆虫学会第61回大会(名古屋)などの内外の関連学会で講演したとともに、論文としてまとめ内外の関連学会誌等に発表済み、あるいは発表予定である。
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