研究概要 |
本年度は計画初年度として、研究システムの構築が第一の課題であった。まず、実験群を設定した。縦断的研究を行う周思春期ニホンザル群をつくり、放飼場群(高浜群)については、新生児から老齢サルまで25頭を年4回継続的に計測するシステムを構築した。前者群は、毎週資料収集を行い、放飼場群では、7月・10月・1月・3月にそれぞれ同一項目の資料を収集した。また幸島野生ニホンザルについては、毎月の体重測定とともに、52頭を一時捕獲し、資料収集する調査を行った。調査は平成12年2月22日に行い、季節性周期のうえではもっとも削痩している頃であり、施設飼育個体成績との比較が持たれる。収集する資料項目は、形態学的資料として、生体計測(胴長,体重,胸囲,皮厚)・Dexa・MRIで、このうちDexaでは、体脂肪量を含む体組成値の年齢変化と季節性を分析するデータが得られた。MRIでは腹部蓄積脂肪の分布を観察・定量した。生理学的資料としては、採血し生殖関連ホルモン・成長系ホルモン(GH,IGF-1)・レプチンの定量を行った。時系列解析等を応用した予備的分析から、IGF-1の分泌動態が、思春期の個体で夏から秋にかけて分泌量が高まり、身長成長の加速をコントロールしていることが示唆された。ニホンザルは体脂肪率が10%以下の個体が大半であるが、オスメスそれぞれで体重12kg、8kgを超過する部分は脂肪によるものであること、同様の闘値体重の存在は、カニクイザルにも見出された。周思春期メスニホンザルで体重季節変動の著しい個体で、繁殖期にレプチン濃度の亢進が認められた。施設飼育個体でも体重季節変動が認められ、それに応じて内臓脂肪と脇腹部脂肪(腸骨稜上部)の変動が著しいことが示唆された。他部分の皮下脂肪では背部も相関した変動を示すが、四肢部の皮下脂肪は変動量がごく少ない。
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