1.日本列島の北緯34度付近の狭い帯状地帯で、寄主転換を伴う同所的種分化が進行中のニホントガリシダハバチHemitaxonus japonicusと、その同胞種であるシシガシラハバチH.sasayamensisの地域個体群について、ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子領域の塩基配列を比較し、それらの遺伝的類縁度を調査した。 2.同領域の547塩基を対象としてDNA構造の比較を行った結果、両種共にこの領域での塩基の欠損や挿入はみられなかった。また、この領域でのG+C含量は21.76±0.37%であった。 3.UPGMA法により構築された分子系統樹では、形態的区別が不可能な同胞種2種は別グループを形成した。ニホントガリシダハバチでは、生態種、生態種形成途上個体群、寡食性個体群の間で塩基配列に違いが見られたが、種形成との関連は今後の課題である。 4.スギナの単食性ハバチ、カタアカスギナハバチcomplexの核型多型はロバートソニアン型開列が原因であり、n=9、n=10、n=11の順に派生した。多型の交雑地帯では、2倍体ヘテロ雌の適応度の低さによる集団からの除去に続く、派生ホモ核型の優先分布により、多型の置換は同所的に起こることが明らかになった。核型多型間には生殖的隔離の発達が見られるが、それが種分化に直結しているか否かは今後の課題である。
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