クロツヤムシ科における生息場所と形態の進化パターンの系統樹にもとづく比較研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11833014
• 研究機関: 滋賀県立大学
• 研究代表者: 近 雅博 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教授 (00211912)
• 研究分担者: 荒谷 邦雄 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (10263138)
• キーワード: クロツヤムシ科 / 系統解析 / 生息場所 / 形態学 / 16srRNA / 新熱帯区 / 東洋区 / 生物地理学

研究概要

クロツヤムシ科Passalidaeを含むコガネムシ上科Scarabaeoideaの三つの科、コガネムシ科Scarabaeidae、クワガタムシ科Lucanidae、コブスジコガネ科Trogidaeについてミトコンドリアの16srRNA遺伝子の約1000塩基の配列を決定し、系統解析をおこなった。その結果、これまでクワガタムシ科に含まれていたミツギリクワガタSyndisus属がクロツヤムシ科と高い確率で単系統群をなすことが明かとなった。これに基づき、今後クロツヤムシ科内の系統解析についてミツギリクワガタ属を外群としてもちいることにした。また、東洋区だけでなく新熱帯区のブラジル産のクロツヤムシ科の数種について、体の厚みと生息場所の間の関係を解析し、東洋区の種にみられるのと同様、樹皮下に生息するものは平たい体形をもち、心材部にトンネルを掘って生活するものはより厚みを帯びた体形をもつことが明かとした。新熱帯区と東洋区のクロツヤムシは6000万年以上前のゴンドワナ大陸の分裂のときに分岐していると考えられ、それぞれの地域には固有の属が分布している。このことから、樹皮下と心材部という二つの生息場所への放散と体系の変化は、ふたつ以上の単系統群で独立に両地理区でおこった可能性が大きいと考えられる。さらにこの仮説を検証するためブラジル産と東洋区産の種を合わせて分子に基づく系統解析をおこなっているところである。

研究成果

• [文献書誌] Kon,M.,M.Tanaka et al: "Passalid beetles(Coleoptera,Passalidae)collected from northern Myanmar,with new records of Ceracupes chingkini and Tiberioides Kawerti"Elytra. 27. 199-205 (1999)
• [文献書誌] Kon,M.,M.Tanaka&K,Araya: "Passalid beetles(Coleoptera,Passalidae)collected from Bhutan, with description of the male genitalia of Tiberioides austeni"Elytra. 27. 471-474 (1999)
• [文献書誌] Kon,M.& K,Araya: "Description of the male genitalia of Ophrygonius sternibarbis(Coleoptera,Passalidae),with new records of Mt.Trus Madi,Sabah and Mt.Mulu,Sarawak"Elytra. 27. 475-476 (1999)
• [文献書誌] Kon,M.,T.Ueno & K,Araya: "A new record of Cylindrocaulus davidi(Coleoptera,Passalidae)from Gansu,China"Elytra. 27. 476-477 (1999)
• [文献書誌] Boucher,S.&M.Kon: "Remarques sur quelques Ophrygonius Zang de la Peninsula Malaise,de Sumatra et de Borneo [Coleoptera,Passalidae]"Revue francaise d'Entomologie(N.S.). 21(3). 125-130 (1999)
• [文献書誌] 近雅博、荒谷邦雄、常喜豊: "ニューカレドニアのクロツヤムシの生物地理学-バヌアツと比較して"昆虫と自然. 34(6). 28-30 (1999)