研究概要 |
野外調査によってその生息場所が明らかとなっているAceraius属11種、Macrolinus属2種、Ophrygonius属7種について体の厚さとその生息場所についての関係を分析した。前胸背の幅PWと体の厚さ(後胸の中央部)BTを測定し、PW/BTを体の厚さとした。Aceraius属のうちA.laniger,A.kuwerti,A.laevicollis,A.kinabalensis,A.sabanus,A.hikidai,A.helferi,A.pilifer,A.ashidai,A.oculidensは体の厚さが0.6から0.7であるが、A.wallaceiだけは0.59以下で他の種より有意に薄い体を持っていた。厚い体をもつ10種は倒木の心材・辺材部にトンネルを掘ってコロニーを形成する種である。それにたいしてより薄い体をもつA.wallaceiは倒木の樹皮下にコロニーを形成する。同様にOphrygonius属でも心材・辺材部にトンネルを掘る4種、O.tuberculus,O.tuberculosus,O.minor,O.neelgherriensisは0.63以上の厚さがあるが、樹皮下にコロニーを形成するO.inaequalisとO.aequidensは前4種より薄い体を持っていた。また倒木の接地面に生息するO.uedaiは0.63以上の厚さをもち心材・辺材部にトンネルを掘る種と同様の体の厚さをもっていた。さらにMacrolinus属についても心材部にトンネルを掘るM.latipennisは0.63以上であるのに対して、樹皮下に生息するM.carteretiは0.56以下の薄い体をもっていた。それぞれの属でどちらの生息場所が祖先的かはわかっていない。ただし、Aceraius,Ophrygonius,Macrolinus3属のそれぞれが単系統群をなしているとすると、それぞれの属で生息場所に対応した体の厚みの進化的な変化がおこったと推定される。今後これらの種について分子に基づく系統解析をおこない生息場所と体の厚さの進化パターンを明らかにする予定である。
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