東京大学付属海洋学研究所研究船淡青丸による航海(航海番号KT99-4、航海期間平成11年4月16日〜4月23日、伊豆・小笠原海嶺、四国海盆を含む海域)、三重大学練習船勢水丸による航海(航海番号9909、航海期間平成11年7月19日〜7月29日、松坂港から東シナ海までの日本沿岸・黒潮域)に参加して外洋性昆虫Halobates spp.の個体群調査を行った。Halobates spp.の採集はニューストンネットによる定量的サンプリングを行い、採集個体の大部分は99%アルコールに保存して持ち帰った。今回の調査結果により、季節によってHalobates spp.の密度・種構成が大きく変動することが判明した。日本近海でのHalobates個体群調査を行うためには少なくともHalobates spp.が定常的に生息すると考えられる高知沖以南の海域を含めて調査する必要があると予想された。 調査航海時には、航海時の種々の海洋気象情報は船によって経時的に記録されており、表面水温・気温についてはサンプリングの前後には別に測定を行った。また、調査時の黒潮情報の海洋速報、船の観測等で確認した。海洋の表面水温がHalobates spp.の密度、種構成に影響を及ぼすことが示唆された。 Halobates spp.の飼育方法確立のため調査航海中に採集された個体を生かして持ち帰ることを試み、あわせて行動観察を行った。生体を持ち帰り飼育に持ち込むためにはHalobates spp.は陸生のアメンボとはかなり異なる取り扱い方法の開発が必要であることが判明した。また、成虫を帰港後解剖した結果、生殖休眠個体が存在することが確認された。
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