研究概要 |
東京大学海洋研究所研究船白鳳丸による航海(航海番号KH02-1、調査海域東シナ海、時期5月下旬)並びに同研究所研究船淡青丸(航海番号KT02-13、調査海域東シナ海、時期9月下旬)に参加して外洋性昆虫Halobatesの採集調査を行った。さらに、オーストラリア沖などからのサンプルも解析し、日本近海での外洋性Halobatesの分布の特性を他の海域との比較しながら解析を進めた。その結果、以下の結果が得られた。1)日本近海では、外洋性のH. germanus, H. micans, H. sericeus3種が分布する。2)そのうち2種が高密度に同所的に生息する場合がある。3)種構成は時間的に変化する。これまでの解析により、日本近海では、海洋表面の水温が種構成の変動に影響を与えていることが示唆された。すなわち、日本近海は、赤道付近に比べ表面水温は低く、緯度としてはH. sericeusの生息域である。H. germanus, H.micansは、低緯度の表面水温のより高い海域に生息するが、フィリピン東沖から北上する暖かい黒潮によって日本近海まで輸送されると考えられる。日本近海の表面水温が十分に高い夏期には、輸送されたH. germanus, H. micansは増殖し、高密度に生息する。しかし、日本近海の表面水温が低くなる冬期は、H.germanus, H. micansは黒潮に輸送されても、生存率・増殖率は低く、生息密度は低く押さえられると予測される。日本近海では、表面水温の低い時期にはH. sericeusが多く採集され、表面水温が高い時期にはH. germanus, H. micansの採集個体数が増加した。この結果は上記の考察と一致する。種構成の変動は他の海域でも見られるが、種構成に影響を及ぼす要因は海域によって異なり、海流・季節風なども重要な要因であることが示唆された。
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