研究概要 |
昆虫の種数は100万種以上にも達し、陸上では他の生物を凌駕し繁栄している。しかし、海の昆虫は希で、外洋にはHalobates属に属する5種の昆虫しかいない。外洋性Halobatesは生態学上・進化生物学上極めて興味深い位置を占めているが、外洋での調査の困難さ故にその生態について分かっていることは少ない。本研究の目的は、日本近海の外洋性Halobatesの個体群調査を行いその生態を解明しようとしたものであり、研究成果の概要は以下の通りである。 日本近海の研究調査航海に参加し、定量的採集調査を行った(参加航海:1999年7月三重大学練習船勢水丸99-09次航海、熊野灘〜東シナ海;1999年4月東京大学海洋研淡青丸99-07次航海、紀伊半島沖;2000年6月東京大学海洋研淡青丸KT00-08次航海、四国・九州沖;2001年5月東京大学海洋研淡青丸KT01-07次航海、東シナ海;2002年5月東京大学海洋研白鳳丸KH02-01次航海、東シナ海;2002年9月東京大学海洋研淡青丸KT02-13次航海、東シナ海)。これらの航海において日本近海で初めて、Halobatessの定量調査が行われた。調査海域ではH.micans, H.germanus, H.sericeusが確認された。3種のうち2種が比較的狭い海域に高密度に生息し、しかも、種構成が経時的に変化することが示された。2種が同じ海域で高密度に生息することが確認されたのは本調査海域が最初である。西岸境界流である強力な黒潮の流れが赤道付近に生息するH.micans、H.germanus 2種を北へ輸送し、3種の共存する特異的な海域が形成されたと考えられる。また、黒潮流域に形成される様々なサイズの渦がヘテロな環境を形成し、3種共存が可能となっていると推察される。種構成の経時的変化は、表面水温の季節・年次変動と季節風の影響と考えらる。
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