1999 年度実績報告書

クラ地峡を境界とするツパイ類、マメジカ類、センザンコウ類の地理学的変異の検討

研究課題

研究課題/領域番号	11833017
研究機関	国立科学博物館
研究代表者	遠藤秀紀国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (30249908)
研究分担者	西海功国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (90290866)
キーワード	クラ地峡 / 地理的変異 / 多変量解析 / コモンツパイ / ベランジェツパイ / ジャワマメジカ / 頭骨 / ミトコンドリアDNA
研究概要	本年度は、計画に従い、コモンツパイ、ジャワマメジカ、マレーセンザンコウ、マレーヒヨケザルの頭骨標本の集積を開始した。同時に標本の骨計測学的検討を進め、データを蓄積している。さらに、鹿児島大学、帯広畜産大学、名古屋大学、京都大学などで標本調査を実施した。その結果、コモンツパイ・ベランジェツパイに関しては、すでに、クラ地峡周辺での骨形態学的データ分析が機能し、集団間変異解析の精度は世界的水準に達している。合衆国国立自然史博物館、オランダ・ライデン自然史博物館、ドイツ・ゼンケンベルク自然史博物館の各研究者と研究成果の討論を継続し、骨学的データの内容は生物地理学的に十分に価値の高いものに加工されている。同時に推進された遺伝子資料の蓄積から、系統解析を開始し、コモンツパイ・ベランジェツパイとジャワマメジカのミトコンドリアDNAに関しては、塩基配列の地理的変異を認識している。具体的に明らかにされた内容は、以下の通りである、まず地峡を境界に、コモンツパイ集団の毛色の変異が見られることを確認、それと完全に一致して分離する頭骨計測値の変異が確認された。両集団の頭骨計測値の分離は、多変量解析(主成分分析と正準判別分析)によって証明された。以上の結果は、集団のいわゆる同所的種分化の可能性を示唆している。また量的には十分ではないものの、ジャワマメジカでも同様の傾向が検出されつつある。さらに大型種では、CTスキャンによる骨計測を試みることができた。以上の結果は、クラ地峡が、海面上昇時に生物地理学的障壁として機能したことを強く暗示するものである。陸棲哺乳類の多くは、地峡部において、かつて地理学的に完全に隔離され、その後の半島化により集団の侵入や遺伝学的撹乱を経験したことが明らかである。以上の結論は、すでに複数の学術雑誌に記載に至った。次年度は以上の見方をさらに確固たる議論に築くため、マメジカ類やセンザンコウ類における形態と遺伝子の情報を集積、解析することが期待されている。

研究成果
(8件)

すべてその他

すべて文献書誌 (8件)

[文献書誌] Endo, H. et al.: "Geographical variation of the skull morphology of the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. 61・9. 1027-1031 (1999)
[文献書誌] Endo, H. et al.: "Osteometrical analysis in skull of the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. (印刷中). 未定 (2000)
[文献書誌] Endo, H., Nishiumi, I. et al.: "Osteometrical skull character in the four species of tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. (印刷中). 未定 (2000)
[文献書誌] Endo, H. et al.: "Functional morphology of locomotor system in the smooth-tailed tree shrew"Annals of Anatomy. 181・4. 397-402 (1999)
[文献書誌] Yamada, J., Endo, H. et al.: "Immunohistochemical study of the gut endocrine cells in the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. 61・7. 761-767 (1999)
[文献書誌] Endo, H. et al.: "CT examination of the manipulation system in the giant panda"Journal of Anatomy. 195・2. 295-300 (1999)
[文献書誌] Endo, H. et al.: "Proceedings of Second Symposium on Collection Building"National Science Museum, Tokyo. 未定 (2000)
[文献書誌] 遠藤秀紀ほか: "動物系統分類学補遺版"中山書店. 451 (2000)

1999 年度 実績報告書

クラ地峡を境界とするツパイ類、マメジカ類、センザンコウ類の地理学的変異の検討

研究代表者

遠藤 秀紀 国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (30249908)

研究成果

[文献書誌] Endo, H. et al.: "Geographical variation of the skull morphology of the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. 61・9. 1027-1031 (1999)

[文献書誌] Endo, H. et al.: "Osteometrical analysis in skull of the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. (印刷中). 未定 (2000)

[文献書誌] Endo, H., Nishiumi, I. et al.: "Osteometrical skull character in the four species of tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. (印刷中). 未定 (2000)

[文献書誌] Endo, H. et al.: "Functional morphology of locomotor system in the smooth-tailed tree shrew"Annals of Anatomy. 181・4. 397-402 (1999)

[文献書誌] Yamada, J., Endo, H. et al.: "Immunohistochemical study of the gut endocrine cells in the common tree shrew"Journal of Veterinary Medical Science. 61・7. 761-767 (1999)

[文献書誌] Endo, H. et al.: "CT examination of the manipulation system in the giant panda"Journal of Anatomy. 195・2. 295-300 (1999)

[文献書誌] Endo, H. et al.: "Proceedings of Second Symposium on Collection Building"National Science Museum, Tokyo. 未定 (2000)

[文献書誌] 遠藤秀紀ほか: "動物系統分類学 補遺版"中山書店. 451 (2000)

1999 年度実績報告書

遠藤秀紀国立科学博物館, 動物研究部, 研究官 (30249908)

[文献書誌] 遠藤秀紀ほか: "動物系統分類学補遺版"中山書店. 451 (2000)